物質の三態と状態変化

【状態変化】

物質は〔 温度 〕,〔 圧力 〕によって〔 固体 〕,〔 液体 〕,〔 気体 〕と状態を変化させる。この物質がとりうる3つの状態を物質の三態という。


蒸発はどんな温度でも起こる。沸騰はある一定の温度になると起こる。どちらも液体から気体の変化。

【物質を構成する粒子と物質の状態】

 物質は〔 原子 〕,〔 分子 〕,〔 イオン 〕といった粒子が多数集まってできている。粒子と粒子の間には,引力が生じており,互いに引き合っている(特に分子間にはたらく引力を分子間力といった)。また,粒子は温度に応じた熱運動をしており,高温ほど活発に運動する。固体,液体,気体は温度による粒子の状態の違いで説明できる。

固体 その物質にとって低温の状態。熱運動が非常に弱く,粒子間の引力の影響が大きく粒子は,位置を変えずにその場で〔 振 動 〕している。固体は体積と形が一定である

 

液体 やや温度が上がった状態。粒子間の引力もはたらくが,熱運動も行う。粒子は,一定の〔 体積 〕中を自由に動いている。液体の体積は一定であるが,形は入っている容器の形になる。一般的に同じ物質であれば,粒子が動くので固体よりも体積が大きくなる

 

気体 その物質にとって高温の状態。粒子の熱運動がとても大きく,粒子間の引力を振り切る。粒子は,自由に広い空間を飛び回っている。気体の体積は入っている容器の容積になる。

 

例題 常温,常圧で昇華がおこる物質にはどんなものがあるか。

 ドライアイス(CO2の固体),ヨウ素,ナフタレン

 

例題 酸素O2,水H2O,鉄Feの粒子の中で,粒子間の引力の強さを強い順に並べよ。また,そのように考えた理由も述べよ。

 

 温度が同じなので,それぞれの物質の粒子の熱運動はほぼ同じと考えらる。酸素は気体,水は液体,鉄は固体なので,結合力は鉄,水,酸素の順になる。

 

例題 日常生活の現象から,水が他の物質とは異なる点がある。それはどのような点か述べよ。
                        (ヒント:氷水を考えてみよう)

 

 同じ物質であれば,固体と液体で質量は変わらない。また,同じ物質であれば,固体よりも液体の方が通常,体積が大きくなるので,密度は固体の方が大きくなり,固体は液に入れると沈む。しかし,氷は水に浮く。

【状態変化と温度】

 固体の状態の物質を一定の割合で加熱すると,物質の温度は次のような変化をする。

 ABCDEFの間では,加えた熱は物質の温度を上昇させるために使われるが,BCの間では,加えた熱は粒子間の引力を〔 緩め 〕て〔 融解 〕を起こすのに使われ,DEの間では,粒子間の引力を〔 振り切って 〕て〔 沸騰 〕を起こすのに使われる。そのため,BCDEの間では温度上昇がみられない。また,このときの温度がそれぞれこの物質の〔 融点 〕,〔 沸点 〕である。沸点や融点は,その物質によって決まっている(固有の)値である。(例:水は沸点100℃,融点0℃)

 

例題

ある物質を一定の割合で加熱していくとき,加熱時間と物質の温度との関係が右図に示されている。

 

(1) 沸点および融点はいくらか。

(2) 次の範囲を図中のAEを用いて示せ。範囲は「~」で示せ。

  ① 固体と液体が共存  ② 固体だけが存在 

③ 液体と気体が共存  ④ 液体だけが存在

(3) 温度t2℃やt3℃では温度上昇が見られないのはなぜか。

(4) 上の図で,BC間よりもDE間の方が長い(加えた熱量が多い)のはなぜが。

 

(5) 上の図のD点の粒子とE点の粒子では,粒子間距離が長いのはどちらか,理由とともに答えよ。 

(6)この割合で加熱していったとき,固体の温度を1℃上昇させる時間はいくらか。ad,t1t3の記号を用いて答えよ。

 

(1) 沸点t3〔℃〕 融点t2〔℃〕

(2) ①BC ②AB ③DE ④CD

(3) 加えた熱が状態変化に使われたから。

(4) 液体から気体にする方が,粒子をより激しく運動させる必要があるから。

(5) Dは液体,Eは気体であり,気体の方が粒子の運動が大きく,より動くので,Eの方粒子どうしが離れる。よってEの方が粒子間の距離が長い。

(6) 固体なのでABで考える。

  0a分の間にt1からt2へ温度が上がっている。つまり,a分でt2t1℃上昇。

  1℃上昇させるには,a(t2t1)

 

【蒸留】

  図のように液体を加熱して気体にし,その気体(蒸気)を冷やし再び液体として集める操作を〔 蒸留 〕という。この方法を利用すると,食塩水(食塩と水の混ざったもの)から水だけを取り出すようなことができる。これは,水と食塩の〔 沸点 〕の差を利用している。

例題 水とエタノールの混合物から,エタノールを分離,精製するために,図のような簡易的な装置で蒸留を行った。また,水とエタノールの沸点と密度を表に示す。

(1) 加熱後しばらくして,沸騰がはじまり,試験管に液体がたまり始めた。この試験管にたまった液体の主な成分は何か。

(2) 試験管にたまった液体を5cm3とり重さを測定したところ,4.3gであった。この方法で,エタノールは完全に分離,精製ができたか,理由とともに答えよ。

 

(1) 沸点の低い方から先に出る。エタノール

(2) 試験管にたまった液体の密度は,4.350.86g/cm3〕。

  この値はエタノールの密度と異なる値なので,完全には分離・精製できていない。

 

【気体の圧力】

 気体は粒子が熱運動により,活発に運動している状態である。高温になるほどその運動はより活発になる。ここで,ゴム風船に気体を閉じ込め,温度を変化させるとどうなるかを考えてみる。

 
 

 ゴム風船の中の気体は,粒子が活発に運動しているため,風船の内壁を押す力(圧力)を持っている。この気体の圧力を〔 気圧 〕という。また,高温ほど粒子の運動(熱運動)が大きくなるので,気圧は高くなる

 

【飽和蒸気圧】

 液体の表面から気化が起こる現象を〔 蒸発 〕といい,このとき生じた気体を  〔 蒸気 〕という。また蒸気が示す気圧を〔 蒸気圧 〕という。

温度,圧力が一定のもとで,容器の中の水は,見た目では何も起こっていないように見えるが,実際は絶えず〔 蒸発 〕と〔 凝縮 〕を繰り返している。逆の変化が同時に同じ割合で起こっているので,見た目では何も起こっていないように見える。このとき,容器内は,液体と気体(蒸気)がそれぞれ一定の量存在している

 
 

 温度,圧力が一定のもとでは,これ以上蒸気が出ることはないので,このときの気体(蒸気)が示す圧力を〔 飽和蒸気圧 〕という(単に蒸気圧というもともある)。

 温度を高くすると,〔 蒸発 〕する粒子の割合が増えるので,容器内では,液体が減り,気体が増える。そのため,飽和蒸気圧は高温ほど,高くなる

 

【蒸気圧曲線】

物質には蒸発しやすいものもあれば,蒸発しにくいものもあり,同じ温度でも物質の蒸気圧は,その物質によってさまざまである。物質の温度と蒸気圧の関係を示したグラフを〔 蒸気圧曲線 〕という。

 気圧はhPa(ヘクトパスカル)という単位を用いて数値で表す。このグラフから,30℃における飽和蒸気圧は,ジエチルエーテルで〔 870 〕hPa,エタノールで〔 100 〕hPa,水で〔 50 〕hPaと読みとれる(グラフの最小目盛りの1/10は目分量で読む)。

 
 

【蒸発と沸騰】

 われわれは大気(空気)のもとで生活している。つまり,われわれの体をはじめ身の回りの物は大気の気圧(大気圧)に押されて形をつくっている。膨らませた風船が温度を変えなければ一定の大きさを保つのは,ゴム風船の中の気体の気圧と大気圧が釣り合っているからである。地球の大気圧は高度や緯度にもよるが,〔 1013 〕hPaである。

 
 

蒸発は液体の〔 表面 〕から気化が起こる現象で,高温ほど起こりやすいが,どの温度でも起こる。沸騰はある一定の温度に達したとき,液体の〔 内部 〕からも気化が起こる現象である。この「一定の温度」とは,液面を押さえつけている力である   〔 大気圧 〕と液体から生じる蒸気の〔 蒸気圧 〕が等しくなるときの温度である。液面を押さえつける力がなくなるので,液体内部からも気化が起こる

つまり,その物質の蒸気圧が1013hPaになるときの温度が沸点である

 
 

例題

(1) エタノールを60℃で沸騰させるには,大気圧を何hPaにすればよいか。

 大気圧を60℃のエタノールの蒸気圧と等しくすればよい。470hPa

 

(2) 富士山の山頂で水を沸騰させると,沸点はどうなるか,理由とともに答えよ。

 

 山頂は気圧が低いので,水は100℃以下で蒸気圧=大気圧になる。そのため,100℃以下で沸騰する。